内分泌構造学

【1. 内分泌器官の有窓型毛細血管における構造形成・調節機序に関する研究】

内分泌器官はホルモンを分泌することで、生体の恒常性維持に重要な役割を担っています。これらの器官の構造的あるいは機能的異常は、様々な疾患の発症につながります。内分泌器官で合成されるホルモンは、組織に分布する毛細血管から血中に移行し、血流にのって標的器官へと輸送されます。内分泌器官に分布する毛細血管は、脳や皮膚に分布する一般的な連続型毛細血管とは異なり、その壁に直径70 nm程度の『窓』が無数に存在する有窓型毛細血管であることが知られています。これらの窓は、組織と血液をつなぐ通路として機能し、ホルモンが血中へ移動する経路となります。

私たちは現在、内分泌系の中枢器官である下垂体に着目し、内分泌器官に分布する毛細血管がどのような分子機序で有窓型になるのか、その構造を維持・制御しているのか、について研究を進めています。これまでに、ラット下垂体を研究モデルとして有窓型内皮細胞の新規培養系を確立し(Nakakura et al. Cell Tissue Res., 383:823-833.2021他)、細胞レベルでその機序の解明に取り組んでいます。

【2. 下垂体後葉の神経内分泌構造の分子形成基盤に関する研究】

下垂体は前葉、中葉 (ヒトでは退化的)、後葉からなり、それぞれの組織で合成されるホルモンは異なっています。後葉では、視床下部に分布する神経分泌細胞の軸索が後葉内に侵入し、有窓型毛細血管に向けて後葉ホルモン(バソプレシン、オキシトシン)を放出してます。 もう少し正確に言うと、神経分泌細胞の軸索末端部は後葉内部の有窓型毛細血管を取り巻く基底膜に接続しているのですが、軸索末端部と基底膜をつなぎとめる分子機序はいまだにわかっていません。

現在、後葉における視床下部神経分泌細胞の軸索末端部と有窓型毛細血管周辺の接続構造の形成や維持に関する分子機構の解明を目指し、ラット個体および培養細胞レベルで多面的に研究を展開しています。これまでに、神経筋接合部(Neuromuscular Junction)の形成に不可欠とされるCol13a1が後葉の接続にも関わる可能性を明らかにしています(Nakakura et al. Neuroendocrinology, 114:658-669. 2024)。

TOP