講座責任者から

「百聞は一見に如かず」という言葉があります。見る (look [英], ansehen [独], regarder [仏]) という行為は人間が物を認識する上で最も重要な手段であるといっても差し支えありません。解剖学は対象を見ることでそのかたちを知り、そこからかたちに宿る構造を抉り出し、機能との関連を探る学問です。もちろん学問に仕切りはないはずですから、上記の命題を中心に茫洋たる拡がりもつ専門領域が解剖学である、と言いかえることができます。

個人的には、特に学生の頃は「見るだけではつまんないな」と思っていた時期もありました。仕切りがないと書いた様に、現代の解剖学にはどんな要望にも応えられる方法論が多数あり、かたちを見ながら同時にダイナミック (動的)な生理機能を追求することも可能です。従って人体をいつでも観察することが許され、またその基盤となる要素技術をもつ解剖学を専攻したことは間違いではなかったかな、と今では考える様になりました。

本講座では基礎生物学から臨床医学、人文科学まで広い領域をカバーするテーマを探求しています。そもそも研究は自分の興味の赴くままにテーマを設定し、その知的好奇心を満たす営為です。面白くないとやる気が起きませんので、制約は最低限にして比較的自由な雰囲気で研究を進めることを意識しています。講座の運営も基本的にはこの原則に基づいて行なっているつもりです。

研究の面白いところは意外なところで、これまで見えてこなかった繋がりが明らかになることです。それは考古学における発掘調査や解剖という行為そのものに直結しているかも知れません。そういった意味で「見ること」と「知ること」は表裏一体であり、ここに「考えること」が加わることで解剖学の研究が成立します。解剖学は歴史的古層が厚い学問領域の代表であるのと同時に広大なフロンティアが広がる領域でもあるのです。

2025年6月26日
竹田 扇

研究室紹介

研究室は板橋区加賀の帝京大学・板橋キャンパスにあります。キャンパスは加賀前田藩の下屋敷跡の一部にあり、また石神井川が望む南斜面に建っており、春には川畔に満開のソメイヨシノを楽しむことができます。最寄り駅は池袋からJR埼京線で2駅5分の十条駅です。そこから徒歩10分弱で到着します。大学棟本館という高層ビルの6階と7階に位置しており、地下2階には解剖学実習室があります。実験室と講座オフィスは7階にあり、大型機器は地下2階に整備されています。教授室、セミナー室は6階にあります。

メンバー紹介

竹田 扇 Takeda Sén中倉 敬 Nakakura Takashi
主任教授准教授
所属は解剖学講座ですが、基礎から臨床、人文科学まで幅広く研究しており、ある意味ディレッタントであるかも知れません。東京大学で基礎医学研究を開始し、山梨大学では新たに医工融合研究に取り組んだので、帝京大学では人文系の研究をさらに発展させたいと考えています。前任校で依頼されて書いたエッセイ (2010年) を読んでいただくと、どういう考え方、経緯で研究に進んだかがわかります。
1968年生まれ。北海道出身。
▶ 試験管と羊の話(2010年)
ラット下垂体を対象に、毛細血管の形態形成に関する研究を行っています。よろしくお願いします。
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田中 秀幸 Tanaka Hideyuki宮下 俊雄 Miyashita Toshio
講師講師
電子顕微鏡観察技術を駆使して、生理学的、薬理学的作用効果が引き起こす細胞内微細形態学変化を長年報告している。特に、アクチン特殊構造の研究を行なっております。脳は感覚、思考、運動、感情などの機能を担っています。私は、こうした脳機能がどのように発現するのかというメカニズムに関心を持ち、機能的な神経回路の同定とその形成過程、さらに回路の破綻によって生じる障害や表現型の解析を行っています。
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有澤 謙二郎 Arisawa Kenjiro猫沖 陽子 Nekooki Yoko
講師助教
献体を用いて人体の多様性について研究をしております。免疫機能における一次繊毛の役割について研究を行っています。組織学、発生学の講義の一部を担当します。
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井上 卓俊 Inoue Takutoshi水藤 飛来 Suito Hirai
助教助教
よろしくお願いします。柔道整復師の現場で思春期のスポーツ障害を多く治療してきました。その中でも、膝の成長痛として知られているOsgood-Schlatter病の病態に興味を持ち、研究してきました。現在はOsgood-Schlatter病の発症と機械的刺激感受機構の関係性に着目し、独自に開発したOsgood-Schlatter病モデルラットを使用して、研究を進めています。
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