細胞生物学I
主に繊毛 (cilium) をターゲットにして研究を進めています。繊毛とは長さが数μm、直径は300nm弱の細い細胞突起です。
以前は動くもの (運動繊毛) と動かないもの (感覚繊毛 = 一次繊毛) に分け、それぞれに対応する特徴的な微小管の構造があるとされていました。
現在ではそのような単純な分類では分けられなくなってきており、両者の性質を兼ね備えたものが多く知られるようになりました。
また鞭毛も繊毛の一種であると考えられています。
繊毛に再び注目が集まったのはここ20年くらいです。そのきっかけは① 網膜色素変性症 (retinitis pigmentosa) や多発性嚢胞腎 (polycystic kidney) の発症に繊毛関連分子の遺伝子変異が関係していること、② 身体の左右を決める際に繊毛が重要な役割を担っていること、が知られるようになったからです。
後者は私も若い頃、東京大学 (廣川信隆教授) で直接その研究の一端を担い現在のテーマに至る基盤を形成しました。
現在私のところでは、まだあまり研究対象になっていない、免疫系、歯牙系での一次繊毛の機能を中心に研究を進めています。
免疫系は浮遊細胞が主体であるため長く研究対象にされてきませんでしたが、T細胞の成熟、教育に関わる胸腺には繊毛をもった細胞があることが割に古くから知られています。
現在、ノックアウトマウスを用いて胸腺上皮細胞の繊毛が免疫系の発達にどのような役割を果たしているかを調べています。
他方、硬組織での繊毛は骨、軟骨に関しては比較的多くの研究が行われてきました。
しかしながら歯牙に関しては研究が進んでいません。特にエナメル芽細胞の様に基質形成を終えたのちには消失する細胞の動態は不明であり、基質産生、細胞死のコントロールには繊毛が関係しているのではないか、と考えています。
現在、主に形態学的手法を用いて研究を進めています。